Mr.エレクトの独り言 2005年06月08日
fc2ブログ

Mr.エレクトの独り言

自主レーベル及び、日本人中古貴重盤ショップ、『エレクトレコード』オーナー、Mr.エレクトによる独舌日記!!

「レコード珍宝館」その2「成田賢/汚れた街にいても」

<解説>前回より、私が昔、配布していたフリー・ペーパー、「トゥーマッチ通信」紙上にての、「レコード珍宝館」と言う企画ページを、順次、ここに再掲載イタシテおりマス。句読点や漢字変換以外、文章には殆ど手を加えず、記述にある情報等、現在と異なる場合は、<追記>として、最後に記載してありマス。今回は、第二号(1996年12月25日発行)より・・・。

「レコード珍宝館」その2「成田賢/汚れた街にいても」

日本コロムビア(マッシュルーム・レコード) CD-7041-Z ’72発売作品
A-1/愛ある限り、2/遠い愛の日を夢見て、3/今日からエトランゼ、4/やすらぎの世界、B-1/淋しそうな若者たち、2/花結び、3/できることなら、4/人間の醜さがひき起こした奇怪な美しさの裏にひそんだ不快な感情を題にした詩、5/汚れた街にいても、6/春だもの。

元GS(グループ・サウンズ)、ビーバーズのツインVoの一人であった成田が、’70年代初期、ソロになって出した2作目のアルバム。1作目に関してはここでは触れぬが、本作は一見すると優男(やさおとこ)な成田の外見同様、いかにもロックっぽい荒々しさや、いかにもポップスっぽい華やかさもなく、しかも堺正章風な、線が細く軽い声質ゆえ、毛嫌いされるか見過ごされがちだが、しかし、その一見素朴で穏やかな第一印象の内に熱い魂を秘めた、実は非常に激しいアルバムである。構成としては、絶望(A-1)~逃避(A-2~4)~出会い(B-1)~葛藤(B-2~3)~憤り(B-4)~希望(B-5~6)と言ったストーリー性溢れるもので、詩の面から具体的に述べるなら、偽りの愛、不毛な愛のはびこるこの世の中にあって、真実の愛、真に人間らしい生き方を、時には傷つき、悲しみ、憤りにまみれながらも求め続けんとする成田のメッセージを表現。しかし、それがストレート過ぎて、ヒネクレ者のたわ言と映らぬのは、本人の作品の合間に配された安井かずみ他による詩の効果であり、それら他人に作品を提供する立場である職業作家と、自己表現者である成田との決定的な違いは(どちらが優劣と言う事では無く)、過去、現在を巧みに描写する彼らと違い、成田の詩には、願いはもちろん、憂いや憤りにさえ前向きな意志が感ぢられる点だ。楽曲、演奏的にも、大野雄二のノリの良いファンキーかつ、時に眩惑的なアレンジ(一曲除く)が非常に良くハマッていて、成田のナルシスティックな唄心を巧みに引き出しており、是非ともアルバム一枚を通して聴いて欲しい作品である。特に、「ルパンⅢ世」のテーマ・ソングや、「巨人の星」(梶原一騎原作)が大好きな人にはオススメである。男とはロマンチストなのだ。

<追記>同作品は、後にCD化されたが、現在廃盤の様である。この手のマイナーなアイテムは、すぐに廃盤になってしまうので、次の再発時には、是非とも即ゲットすべし。成田は本作発表の後、主にアニメや映画の主題歌で活躍する事となる。

(つづく)
スポンサーサイト