Mr.エレクトの独り言 2005年10月20日
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Mr.エレクトの独り言

自主レーベル及び、日本人中古貴重盤ショップ、『エレクトレコード』オーナー、Mr.エレクトによる独舌日記!!

禁未来小説「ドラへもん」その17「偽りの愛」の巻

ああ、思い出してみれば、僕の人生は、実に無味乾燥であり、何と虚ろなものだったのであろうか・・・。

ただただ、パパやママに言われるままに学校へ行き、勉強もスポーツも、何となくこなしていただけだった。とは言え、僕の知能指数と運動神経ぢゃあ、何をやっても無駄だったと思うけどね。

それに、良く考えてみれば、パパやママに対しても、確かに、必要以上に僕にやさしく親切な人達だとは感ぢるけど、何かを与えられたり、施される事に対しても、これと言った感謝を抱く事も無く、ただ無感動に、本能の赴くままに生きていただけだった。

だから、あの憎きドラへもんと言う、ある種、肉親の愛を奪い合う兄弟の様な存在が現れた事により、初めて、自分とパパやママ、すなわち家族の絆と言うものを見つめざるを得なくなり、僕は本当に、この家の子なんだろうかって、不安な心境に陥ってしまったんだ。

でも、ついに、あのやさしいパパが、事なかれ主義の仮面を外して、本気で僕にぶつかって来てくれた。こんな嬉しい事ってあるだろうか。ウフフ・・・。やさしくされても感ぢなかった愛を、叱られて感ぢるなんて、僕って変かしら・・・。

そして僕は、ドアを開けるや、開口一番、パパに謝った。

のひ太「パパ~!!ごめんなさい!!僕が悪かったよ!!もうワガママなんて言わない。約束するよ!!僕、良い子になる!!」

「ほ~。よう言うた!!その言葉に二言は無いぢゃろうのう!!」

のひ太「えっ!?そのダミ声は、まさか!?まさか!!」

「そのまさかデ~ス!!ドォウフフ!!こんば~んわ~!!の~ひ太ク~ン!!」

のひ太「ああっ・・・!!お前は!!」

何と、そこに居たのはパパでは無く、秘密の道具で声を模倣し、まんまとパパになりすましていた、ドラへもんであった。

ドラへもん「おりゃ~!!こんのひ太のクソガキャ~!!今日こそパパさんとママさんに詫び入れさせちゃるけんの~。覚悟せい!!」

のひ太「また・・・またお前か~!!もういい加減にしろよ!!もうたくさんだよ!!もうまっぴらだよ!!もうごめんだよ!!もううんざりだよ!!もうお前のおせっかいには辟易してるんだ~!!」

僕は、生まれてこの方、これほどの激昂を覚えた事は無かった。生まれて初めて芽生えた・・・と言うか、やっと目覚めた肉親への感謝、人を愛する気持ちを、粉々に打ち砕かれたのだから・・・。

そう。僕は、怠惰な毎日、無為な日々を漫然と過ごしていながらも、こころの奥底では、実は愛情に飢えていたのだ。

そんな愛情飢餓ゆえに苦しんでいる僕を、一度ならず二度も三度も騙すなんて。

許せない・・・。ユ・ル・セ・ナ・イ~!!

のひ太「僕に・・・、僕のこころに指一本触れるな~!!」

ドタン!!ドッタンバッタン・・・ドガドガドシャ~ン!!

僕は、階段の上、すなわち2階から1階へと、ドラへもんを突き落とした。

ドラへもん「ふぎゃぶでび~!!」

ガシャン。プシュ~・・・プスプスプス・・・。

哀れ、物凄い勢いで階段を転げ落ちたドラへもんは、ボディの隙間から黒い煙を上げながら、もはやピクリとも動かない。

さすがの物音に、居間に居たパパとママも、大慌てで飛び出して来た。

そして、この一件によって、この日、ドラへもんのみならず、僕とパパやママとの関係にも、もはや修復不可能な大きな溝が生まれたんだ。

僕は、自分の運命が大きく狂い始めている事を感ぢずにはいられなかった・・・。

つづく
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