Mr.エレクトの独り言 2007年08月18日

Mr.エレクトの独り言

自主レーベル及び、日本人中古貴重盤ショップ、『エレクトレコード』オーナー、Mr.エレクトによる独舌日記!!

PAINTBOX(2004年3月27日の日記より。)

★2004年3月27日の日記から、再掲載イタシマス。(一部修正済)

①<後編>

PAINTBOXの2ndアルバム、「EARTH BALL SPORTS TOURNAMENT」。

本作を初めて聴いたのは、ほんの数ヶ月前の事であった。1stアルバムに少々失望していたので、正直それほど期待はしていなかった・・・。

まずは1曲目、「百糸一繭」。むむっ・・・、何やら異様に気合が入っているぞ。イントロは、これから何かが始まる事を期待させる、実に重々しい様相だ。挿入されてるトランペットは少々ベタなアレンジと言えなくも無いが、新しいハードコアを創ろうとの意欲はひしひしと感ぢられる。そして、曲が始まる・・・。これは良い!!この1曲目で、すべてオッケー。聴いてもらえば一発なのだが、なんとも回りくどい複雑なコード進行、それも猛スピードでの。これこれ、これだよ、チェルシーさん、貴方に求めていたのは。少々の速い曲もさらりと弾きこなしてしまう貴方なんだから、普通の人にはとても弾けない程の難しい曲を創ってもらわなくちゃあ。こんな曲を創れるのは、しかも弾けるのは貴方しか居ない。人間の複雑なこころ、難解にして微妙な感情を表現するには、このくらい難しい曲ぢゃないと・・・。偏執狂的なまでの、当て字による語呂合わせ連発の歌詞は、少々しつこいきらいもあるが、他の人がやっていないと言う事で、素直に評価したい。英語と日本語のちゃんぽんは個人的には好みでは無いが・・・。

2曲目「切迫」。一曲目もそうだが、明らかに具体的な対象に向かって作詩されており、こころの葛藤が反映された曲調もそれに伴う切迫度ゆえ、言葉もリアルに響く。こう言う曲もあるからこそ、ハードコアの速いリズムも必然性を帯びてくるのだ。

3・4曲目、「Round & roll」~「ケモノ」。しゃにむに突き進む様な、典型的なハードコア・パンク・サウンド。「ケモノ」には、パンクにありがちな、既存の社会体制や権力者へのありきたりの反抗では無く、更に一歩踏み込んだ、地球的規模の、人間と言う生き物に対する批判がなされている。

5曲目、「傷跡」。失意と絶望、何とも言えぬ虚しさや哀しさが如実に表されている。しかし、怒りの根元に目を向け、単なる勢いだけでは無く、現実を直視した上で、日々襲い来る“あきらめ”の感情を克服せんとする反逆心が心地よい。ギター・ソロの、大空に絵を描く様な、生き生きとしたダイナミックな音色も、実に爽快である。

6・7・8曲目。7曲目などは、GBHタイプの、オーソドックスなハードコア・パンクだが、彼らのこだわりの表明と、アルバムを通して聴く時のスパイス、あるいはブリッジ的役割だろうか。8曲目、「W.W.W.W.」のコード進行は、弾いてみれば解るけど、実にユニークでしゃれており、思わずニヤリとさせられる。そして・・・、

9曲目、「彩果て」。流石、イントロ職人(?)のチェルシー氏、実にカッコイイ、イントロである。更に聴き所は、激しい曲調から、一転、ミドル・テンポとなる、中盤の挿入部分の終わりから、堰を切るかの様に突入する間奏部分。まさしく塞き止められた水が一気に噴き出すかの様に繰り出される、空気を切り裂くかの様なギター・ソロ等は鳥肌モノである。

(中略)

12曲目、「惑惑(マドワク)」。激しいサウンドだが、特筆すべきは、サビの強引なコード展開。この辺りに、チェルシー氏の、他のハードコアには無い、感情移入的作曲能力の真骨頂を見る。

ラスト13曲目、「罰災」。「切迫」の葛藤を表現した曲調と「ケモノ」の大きな視点の詩、「傷跡」の微細な感情表現等が生かされた、彼らならではの曲。

若さゆえの怒りや不満を、ストレートなサウンドに乗せた、やけくそでがむしゃらな音楽も好きだけど、いつまでも世間知らずや無知ではいられないし、体力も衰えて来る。音楽に限らず、表現者たるもの、人間としての成長が作品に反映されなければ意味が無いと、私は考える。そう言った意味で、人間らしい感情に溢れた本作は、紛れも無く、ハードコア・パンクの進化形であると断言出来よう。とは言え、音楽と言う大海では、ハードコア・パンクと言う港から船出をしたばかりに過ぎない事を、彼ら、そしてチェルシー氏が自覚しているのならば、今後も期待して間違い無いはずだ。

他人の歩いた道を行くのは、つまらな過ぎる。音楽に限らず、自分にしか出来ない事をやらずして、一体何のために生まれて来たのか。リスナーと言う楽な立場からの勝手な言い分とは解っているが、もっともっと、こころを震わせ血をたぎらせてくれる様な音楽を、私は聴きたいのである。

②<総評>

あくまでも個人的な嗜好であるが、彼らの1stが物足りなくて、2ndを大絶賛する理由は何故であろうか?私は、自分の直感的な思考が間違っていないかどうかを、ずっと考え続けて来た。そして、一応、結論らしきものが出た。

1stの良さは、猛スピードで走るレーシング・カーが、他の車をスイスイと華麗に抜き去ってぶっちぎる感覚。もっと言うなら、車がふわっと地面から浮く様な軽妙洒脱なポップ感覚も有している。だから、決して悪くは無い。しかしながら、抵抗や障害が無いゆえに、軋轢、摩擦も少なく、反逆心があまり感ぢられないのだ

その反対に、2ndは、わざわざ困難な壁や障害に自ら挑み、力任せにぶち当たったり、なんとか越えよう、どうにかして壊そうと無理していると言うか、努力、挑戦、反抗、反逆心があり、それゆえ、それに伴って、苦悩、葛藤、失望、絶望と言った感情も、必然的に生まれてくるのだと言えよう。

そもそもパンクと言うものは、既成のスタイルに対する反逆であり、自己主張のため、価値観の変革のための破壊なのだから、完成したり、満足してしまったらオシマイなのだ。また、必然性の無い怒りをひねり出した所で、そんな付け焼刃など簡単に見破られてしまう。現実を直視し、問題意識を持つ事、あるいは、自らに使命を課すなり、実現不可能な理想でも掲げない限り、今の世の中は何でも手に入る様に見えるから、すぐに挑戦心や開拓精神なんて日和ってしまうのである。

もっと、もっと、もっと、もっと、本当に過激な、単にうるさいだけでは無く、こころの振幅の激しい、人間の生々しい感情をリアルに反映させた様なエモーショナルな音楽を、私は求めてやまない。誰かが既にやった事、誰にでも出来る事をやってる様な音楽はつまらない。今まで見た事も無い、聴いた事も無い、強烈かつ鮮烈な刺激が欲しいのだ。

「そんなの俺でも出来るよ~」なんて思われたら、ミュージシャンは死ぬしかないでしょ。

しかし、それは、表現者として人前に立つ人間の責任であり、宿命でもあるのだ。


★2007年8月18日追記★

上記、若気の至りで、今より更に偉そうな事を申しておりマスが、ご容赦下サイませ。m(_)m

このアルバム、初めて聴いた日から半年間、毎日、一日も欠かさず聴いてたな~。