ある日の授業中。ついうっかり、ボクは居眠りしてしまった。
そして、授業が終り、ざわつき始めた教室の雰囲気で目が覚めた・・・と、その瞬間、背後に得体の知れない気配を感ぢ、慌ててボクは振り向いた。
そこには・・・。
何とも形容し難い、邪悪な笑みを浮かべた女子が一人。
「ヤバイ!!・・・もしや!!見られてしまったのか!?」
ボクのこころの内なる叫びを察知したかの様に、そいつは黙ったまま、しかし、そのどす黒い瞳で、こう答えた。
「見たわよ」・・・と。
何てこった!!よりによって、あのゴシップ好きでおしゃべりな、こいつに見られてしまうとは!!
「ああ、お願いだ・・・。黙っていてくれ・・・。この事だけは、誰にも・・・。そう、誰にも・・・。」
だけど、その切なる願い、虚しきボクの望みは、とうてい叶えらようはずもなかった・・・。
ノートに殴り書きされた、おびただしい数の名前・・・。
「シズコちゃん」
「シズコちゃん」
「シズコちゃん」
「シズコちゃん」
・・・。
こんなものを見られて、何と言い訳すれば・・・。否、言い訳なんて通用するもんんか。・・・と言うか、言い訳すればするほど、かえってドツボに嵌るだけだ・・・。
「絶対に言うな~!!誰にも!!」
下校時間。ボクはそいつに直談判するつもりだった。
・・・が、時既に遅し。
シズコちゃんに耳打ちする、そのおしゃべり女。そして、疑心暗鬼な顔つきで、おそるおそるボクの方に目を向けるシズコちゃん。
終った・・・。すべては。
(つづく)