あの日。そう、ボクの恋心を悟られてしまった日から、シズコちゃんの様子が一変した。
例えば、前は割と大人しい子だったはずなのに、休憩時間、ボクの席のすぐそばで、これ見よがしに大きな声で女友達と談笑してみたり、何だかんだと、ボクの視界に入ってくる事が多くなったんだ。
そして、それは明らかに、ボクの存在を意識した行為の数々だった。
「もしや、シズコちゃんも、ボクの事を憎からず思っているのかしら?」
「いやいや、そんな夢の様な事。きっとボクをからかってるか、思春期特有の照れ隠しに決まってる。」
・・・そんな自問自答を繰り返しつつも、シズコちゃんの、その明らかな変化、あからさまな行為の数々に対し、ボクの方こそ、照れを隠す事が出来なくなっていた。
ボクはわざと無愛想に振舞ったり、シズコちゃんを避ける素振りを繰り返した。
ホントは、シズコちゃんのそんな態度が、嬉しくて堪らないくせに・・・。
そんなこんなで、結局、何も起きないままに日々は過ぎて行く。
だけど、その反対に、ボクのこころの中でシズコちゃんが占める比重は、日に日に増して行ったんだ。
「シズコちゃん・・・。ああ、シズコちゃん・・・。」
かと言って、何ら積極的な行動を起こせないボクは、シズコちゃんに話しかける事すら出来ないでいた・・・。
なのに、そのくせ家に帰れば帰ったで、すぐにシズコちゃんの事を思い出し、その苦悶とも悦楽とも知れぬ葛藤に、この身を溺れさせる毎日なのであった・・・。
(つづく)