
★(CD-R)¥300
①生命(イノチ)、②生きる、③シーソー・ゲーム、④愛を下さい、⑤シャア専用ボク、⑥星の子供達、⑦Sweetest trap。
タイトルにある通り、この作品は、病気マンが過去に発表した音源を集めた、アーリー・イヤーズ・オブ・病気マン自選集・・・とでも呼べるものである。また、ここに収録されている楽曲群は、後に発表された「病気でも....2007」に比べ、実際のライヴの雰囲気に近い作風のものが多いと言う事も付け加えておこう。
さて、本作を手に取って、まず目を引くのが、禁忌な悪寒をもよおす、ジャケットのイラストである。そこからは、他人が気軽に覗き込む事を拒絶する、独りの男のトラウマとマントラが、強烈な腐臭を伴って漂って来るかの様だ。
そして、そんな封印したはずの過去の“おもいで”を、禁断の扉を開くかの如く、自ら披露・・・否、吐露しようとの試みは、自虐的な芸風を売り物にする病気マンならではのものであると言えるだろう。
以下、全曲解説。
①②は、元ゴキブリコンビナート女優、セロトニン瘍子嬢とのデュエット作品。①は、似非ヒーリング・ミュージック的なメロディーが胸を“打つ”・・・のではなく、“鬱”に突き落とす名唱。②に至っては、突如転調して繰り出される狂おしいディスコ・ビートが、脳内に燻る虚無感を、完膚無きまでに燃やし尽くすかの如し・・・である。
③④は、やはりゴキブリコンビナートの劇団員である、マンコN・Y氏が参加。③は、打ち込みのビートに乗せてアジテーションする病気マンと、クールなナレーションとの対比が、シリアスな歌詞の内容を、更に生々しく演出。④は、トライバルなビートをベースにしたサウンドが、メビウスの輪の如くエンドレスに湧き起こる、こころの葛藤と渇望とを、見事に体現せしめている。
⑤。幼少期の独り遊び、あるいはボ○老人の独り言を思わせる導入部から、一転、強烈なディスコ・ビートに乗せた、やけくそ気味な咆哮は、もう決して取り戻す事の出来ない、失われた日々への悔恨と憎悪とを表しているのであろうか。
⑥は、国民的人気アニメの台詞を無断引用、自作BGMをバックに繰り広げられる、14分弱に及ぶ意欲的なコラージュ作品。日常の何気ない営みの内にも、人の世の無常を憂いてみせる、病気マンの菩薩的側面を垣間見る事が出来る作品。・・・衝撃のオチあり。
⑦。約10分に渡るロング・トラック。心臓の鼓動を思わせる打ち込みのビートに乗せ、きらめくようなパーカッションと牧歌的な音色のシンセサイザーによって奏でられる、実にスピリチュアルな作風。これらは一見、この世に誕生した無垢なる生命への讃歌とも見て取れる。しかしながら、合間に挿入された台詞から想像される他愛の無い日常の情景描写は、おそらく、「死の直前には、過去の記憶が脳裏を走馬灯の様に駆け巡る・・・」との謂れを指し示すものであろうし、実際、後半には「何者かと出会い、祝福される」かの光景が描かれている事からも、この作品が、人が一生を終える臨終の瞬間を表現したものであると考えて、ほぼ間違いないだろう。
最後に、全体を通して聴いた感想。本作は、一人の人間が、誕生し、挫折、葛藤、苦悩、絶望を繰り返した果てに、穏やかな死を迎える・・・と言った、ある種、人生絵巻的な構成の内容となってはいるが、そこに通底して横たわってるものは、作者、すなわち病気マンの、「死を望むこころ」ではなかろうか。・・・ただし、ここで言う“死”とは、決して悲観的なものではなく、あくまでも、自分にとって納得の行く形での“完結”を目指すと言う意味においてであり、言い換えるならば、それは、“己が人生と言う名の作品”を“完成”させようとの、極めて前向き、かつアーティステックな欲求に基づいたものなのである。
その自暴自棄かつ自虐的、破滅願望に満ちたライヴ・パフォーマンスの印象が、あまりにも強すぎるため、単なる色物に見られがちな病気マン。だが、もしも貴方が、「笑えない現実を笑い飛ばす」、その姿勢や良し・・・とするのであれば、実際それが、硬派なメンタリティによってもたらされているのだと言う事も、自ずと理解出来るはずだ。
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