ある日、警察署に、ひとりの女性が駆け込んだ。
いわく、男に監禁され続け、今やっと逃げ出したそうだ。
警官が慌てて自宅に乗り込むと、男は死んでいた。
そして、近くには、ついさっきまで看病していた痕跡が・・・。
そう。逃げた女性は、つい先程まで、男を看病していたが、ついに男が息絶えたゆえ、やっとの事で、長い監禁生活から解放されたのだ。
聞くと、別に手錠をかけられた訳でも無く、ロープで縛られた訳でも無く、買物もトイレも自由に行かせてもらえた様だ。
それでは、何故、今まで逃げなかったのか?
その女性いわく、男のやさしさと甘い言葉に騙され、ついつい、婚姻届けに捺印してしまったため、今の今まで、別れる事が出来なかったと言う。
そして、男が老衰で死ぬまで、60年もの間、男の家に監禁されていたそうだ。
女性は、現在83歳。
しかし、監禁罪を適用しようにも、夫は既に死んでいる。
「違うのよ~。私が訴えたいのは、国よ、国。」
女性は、国を相手どり、女性を家に監禁してしまうかの如き、結婚と言う制度に対して、訴えを起こしたいと言う。
何と、その女性は、結婚した後に別れる事も可能な、離婚と言う便利な制度がある事を知らなかった模様。
それで?と警官が問うた。
「おばあちゃんは、監禁されている間、つらかったの?」
女性いわく、「そうねえ、つらい事も多かったけど、まあまあ幸せな方だったかしら?」
「でもねえ、今更、自由に恋愛の出来る年齢(とし)ぢゃ無いし・・・。」
そう言うと、女性は、昂ぶる感情を押さえきれぬかの様に、床に泣き崩れて、こう叫んだ。
「わたしは、もっともっと、本当の恋がしたかったのよ~・・・。」
(おしまい)
★皆様も、国家の仕組んだ、結婚と言う名の“恋愛詐欺”には気を付けましょう。