会話の無い食卓・・・。あったとしても、差し障りの無い言葉を交し合うだけの、おざなりな人間関係・・・。ただただ、面目を保つためだけに共同生活する三人・・・。
食事を済ませ、風呂から出たボクは、今日はもう寝ようと、二階の自室へ続く階段を昇って行く。
一歩、二歩、三歩・・・。
その姿は、まるで死刑囚が、絞首刑を受けるために、13階段を昇っていくかの様だったろう。
独りの部屋。ボクはベッドにうつ伏せになった。・・・と、決まって頭に浮かぶのは、シズコちゃんの面影だけだ。
「シズコちゃん・・・。ああ、シズコちゃん~!!」
フフフ・・・。まさしく、夢中・・・とでも言うのだろうか。・・・そう。何かに夢中になる事って、悪くない・・・。それが真実の恋であろうと、気の迷いや錯覚であろうとも・・・。
たとえ一瞬とは言え、いやな事をすべて、忘れさせてくれるんだから・・・。
「ああ、シズコちゃん・・・。ボクを助けて・・・。ボクを救って・・・。ボクは・・・、ボクは・・・、ボクは・・・寂し・・・。」
ふと気がつくと、時間は夜の11時過ぎ。階下の物音で、ボクは目を覚ました。
「あれ?いつの間に寝ちゃったんだろう・・・。」
そして、トイレに行こうと階段を下りる、ボクの耳に聞こえてきたものは・・・。
パパ「そんな事言ったって、しょうがないだろう!!」
ママ「みんな、貴方のそんな性格のせいなんデスよ!!」
・・・どうしよう!!パパとママが、またケンカしてる!!ここんとこ、毎晩だよ~・・・。
どうしようどうしよう!!ママが、また出ていっちゃうよ~!!
パパのバカ!!
そうだ!!パパさえ居なくなれば、ママが出ていく必要もなくなるはず・・・。
その時、ボクの脳裏には、正体不明な黒い煙が充満し始めていたのだった・・・。
(つづく)