あくる朝。・・・既に、ママの姿は無かった。
二度目の出来事とは言え、この気持ちが君達に解るだろうか?・・・朝起きたら、いつも居るはずの家族が、忽然と姿を消しているのだ。
昨日まで、常に“あるはず”だったものが、いつまでもあると思ったら大間違いなのだ・・・。
「ふ~・・・。」
でも、ヤバかった・・・。昨日までの精神状態であれば、ボクはきっと、パパをどうにかしてしまっていただろう。
危ない危ない・・・。もう少しで、何もかも台無しにしてしまう所だったよ。
・・・とは言え、ママが出て行ってしまった事は、確かに悲しい出来事ではあったけど、その喪失感の無さ具合に、実は、ボク自身が一番驚いていた・・・。
そうさ・・・。どうせ、ママはボクの事なんか愛してなかったんだもの。居ても居なくても・・・。
それよりも、今は・・・・。そう、ボクは余計に、シズコちゃんに対する思慕と焦燥とを募らせ、頭の中は、その事でいっぱいだったんだ。
だって、だって、もうすぐ夏休みに入ってしまうんだよ。そうなったら、1ヶ月以上、シズコちゃんとは会えない訳だから、そしたら、その間にシズコちゃんが別の男子を好きになっちゃうかも知れないし、その逆に、他の男子がシズコちゃんに接近する事だって、充分在り得る!!
ボクは、あれこれと妄想を巡らせ、ありとあらゆるケースを想定しては、焦りと不安に追い立てられていた・・・。
そうだ!!シズコちゃんだって、少なくとも、ボクの事を嫌いぢゃないはず!!
だから、夏休みになる前に、夏休みになる前に、何とかボクの気持ちをシズコちゃんに伝えるんだ!!
・・・何としてでも!!
だけど、どうしよう?他の誰かには知られたくないし・・・。手紙でも渡そうか・・・。いや、手紙は証拠が残っちゃうし・・・。何か良い手は無いかしら・・・。
(つづく)