Mr.エレクトの独り言 ★「ジュン上久保(上久保純)②」(2004年12月30日の日記より再掲載)
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Mr.エレクトの独り言

自主レーベル及び、日本人中古貴重盤ショップ、『エレクトレコード』オーナー、Mr.エレクトによる独舌日記!!

★「ジュン上久保(上久保純)②」(2004年12月30日の日記より再掲載)

★「ジュン上久保(上久保純)②」(2004年12月30日の日記より再掲載)

ジュン上久保「サンフランシスコの奇跡/NOTHINGNESS」。

このLPを初めて聴いたのは、10年も前になるだろうか?確か、代々木のフリマで200円で買ったのだった。その頃は、既に店もやっていたので、・・・と言う訳でもないが、昔からとにかくレコードは買い捲っていたので、買っても聴かない事など日常茶飯事なのだが、このレコードは、その簡素なジャケット及び、クレジットの少なさから、一度は針を下ろす気にさせられた。その頃は、日本のロックにあいそをつかし、歌謡曲にも傾倒していた頃でもあり、山口百恵などにも作品を提供している千家和也が作詩していると言うのも、その理由の一つであった。なんせ、近所の古本屋で、千家和也「作詩講座」なんてのも購入して読んだ事があるほど、興味の対象であったから・・・。

①「勲章いっぱいぶらさげて」
いきなりヘヴィなリフの曲で、愛や名誉と言った、一般的には価値があるとされている事柄を風刺した作品。オープニングの、この曲のせいで、“スピード,グルー&シンキ”(1970年初頭に活動していた、解りやすく言えば日本の“CREAM”みたいなグループ。加部正義在籍)と比較されたり、一緒にされるんだろうけど、まあ、彼らは本格派と言うか、歌詞も英語だし、洋楽そのものなんだから、寂しいからって無理に洋楽の仲間にしないでもらいたいものである。

②「死んだ恋人は」③「天国行きの最終便」
既にこの辺りで、ハード・ロックを期待する多くの人は挫折するのでは?これらスローなブルース・ロックは、柳ジョージを更に泥臭くした感ぢで、好き嫌いが分かれる所だろう。私も嫌いでは無いが、②③の歌詞には、ちょっとばかし、本場のブルースの訳詩的な印象を受けなくもない。しかしまあ、アルバム全体のバリエーションと言うか、ストーリー展開としては悪くない。

④「愛が欲しい」
この辺りから、このアルバム全体を覆うトーン、厭世的な人生観と言うものが濃厚になって行く。世間では、愛と友情、夢や希望などの、本当は個人の欲望に基づくものであるにも関わらず、嘘臭い連帯感や共感を求める押し付けがましい歌ばかりゆえ、これは非常に貴重である。もちろん、そんな失意や焦燥感を歌ったものは、他にもあるだろうが、そもそもが上久保ひとりの多重録音作品である事からしても、“独り言”的な強烈な孤立感が醸し出され、非常に心地良い。

ところで、本来なら、④と⑤の曲間は、レコードのA面とB面の境目なため、どう考えても、盤を裏返す時間は無音なのだが、今回のCDは、④のラストの急なフェイド・アウトの後、通常の曲間以上に短いタイミングで、⑤がすぐに始まるが、これには納得行かない。もともとのマスター・テープがそうであったのかも知れないが、当時はレコードで発売する事が前提なのだから、④と⑤の曲間は、せめて通常の曲間程度に空けていてもらたいものだ。それとも、これは上久保自身の意向なのだろうか?

B面に(つづく)