Mr.エレクトの独り言 永ちゃん
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Mr.エレクトの独り言

自主レーベル及び、日本人中古貴重盤ショップ、『エレクトレコード』オーナー、Mr.エレクトによる独舌日記!!

永ちゃん

私は、自己表現とエンターテイメントを、はっきり区別して考えている。音楽においては、どちらかと言うと自己表現の方が好きだが、実はエンターテイメントにも多大な理解を示しているので、単に変人ぶりたい人と一緒にしないで欲しい。

矢沢永吉は好きだ。なれそめは中学生の頃、「ザ・スター・イン・ヒビヤ」と言う、日比谷野外音楽堂でのライヴ盤のミュージック・テープを友人から借りたのがきっかけだが、当時はニュー・ミュージックがブームであり、私も当初はアリスとか松山千春なんかを聴いていたが、だんだんもの足りなくなり、甲斐バンドとか、吉田拓郎、永ちゃん等を好む様になった。・・・とは言え、現在はアリスや松山千春の良さも再認識している。また、ロックに飽きて聴きはぢめた歌謡曲、私の大好きな梶芽衣子(さそり主演時期の「芽衣子のはじき詩」「やどかり」各LP)なんかも、そのネガティヴかつダークさで一般受けはしないが、完全なるフィクションと言う意味合いにおいて、エンターテイメントと定義している。

「永ちゃんがウォーホールを知ってたら、あんなに売れなかっただろう」と言うのは、私の名言だが(←自分で言う)、実際、永ちゃんが「文化がどうの」とか「芸術がどうの」と言う事にこだわりを持ってたら、あんな風に一般受けする歌詞を歌ったり、イメージを演出する事に対し、自らが疑いを持ったであろう事は否めない。私は何も、それが悪いと言ってる訳でも、ポピュラー・ソングを否定している訳でも無い。逆に、矢沢永吉と言う男のピュアさを誉めているのだ。

本当は文化的に優れたものを知ってるくせに、商売と割り切って、明らかにレベルが低いと解かっているものを提示し続け、さも文化的な匂いを振りまくインチキ野郎とは大違いだ!!現在は情報網も発達し、良いものが目に耳に入りやすくなり、ビートルズが神様だった、永ちゃんの時代と違い、演る側も大変かも知れない(その割には観客も見る目が無い様にも思うが)。越えなければならない基準は高くなっていると、私は思う。なにせ、良いものを見聞き出来る環境にあるのだから、もっと音楽的に研究や探求、追求がなされても良いのでは無いだろうか。観客がダメ出しをしない以上、ミュージシャン、(すなわち観客よりも音楽が好きであると公言しているに等しい)演奏者側が、自らをジャッジすべきでは無いのか。

永ちゃんの楽曲を、ギターでポロンポロンと弾いて見ると、実に全身を使って曲を創ってる事が伝わって来た。音楽に対して、ものすごく誠実なものを感ぢた。

金のために音楽を演る。これは悪い事でも何でも無い。問題なのは、金のため(あるいは売れるため)に、音楽のレベルを意識的に下げる事である。「金儲けのため、金持ちになりたいがために死ぬほど良い曲を書こう。最高に良い曲を創ろう」、これは間違いでは無い。目的は人それぞれ違うが、その方法が問われているのだ。

真のエンターテイメントとは、客を喜ばせる事であり、客を騙す事では無い。持ちうる能力のすべてで、お客様をもてなしてナンボでは無いだろうか。