カップ麺でも食べるか・・・。ボクはやつれた肉体をひきずる様に、階段を下りていった。
すると、居間からテレビの音が・・・。
そうか、パパが居るって事は、今日は日曜日なんだ・・・。
ボクはそ~っとキッチンに忍び込み、買い置きのカップ麺に注ぐお湯を沸かすため、ヤカンに水を入れようとした・・・と、その時、居間から声が・・・。
「ん!?のひ太か?」
どうやら、パパに気づかれた様だ。・・・だけど、ボクは返事せず無視をした。
「夏休みの宿題は終わったのかね?」
パパの奴、また酒飲んでるな。
「どうした!?返事くらいしろよ~!!」
・・・もう限界だった。
疲れてるせいもあったんだろう。でも、あまりにものん気なその口調に対し、これまでたまりにたまったボクのこころの鬱憤や鬱屈が思わず爆発してしまった。
のひ太「うるさい!!パパのせいだぞ!!みんなパパが悪いんだ!!ママが家を出て行ってしまったのも、ボクがこんな駄目な人間に育ったのも、みんな・・・みんなパパがだらしないからなんだ!!」
パパ「おいおい、どうしたってんだ、のひ太!!パパびっくりするぢゃないか・・・。」
のひ太「どうしたもこうしたもないよ!!」
居間とキッチンを繋ぐ扉を開ける事さえないまま、ボクは声を荒げ、姿さえ見えぬ隣室のパパを罵り続けた。
のひ太「パパが・・・パパがボクをちゃんと厳しく育ててくれなかったからいけないんだ!!パパは自分が悪者になりたくないだけで、ボクの将来の事なんて本当は何も考えてないんだ!!パパのその一見やさしさに満ちた行動は、ただ単にパパ自身の甘えに過ぎないんだ!!」
パパ「の・・・のひ太・・・。」
のひ太「パパは・・・。パパは無責任だ!!」
パパ「おお・・・ゴメン!!ゴメンよ、のひ太。だけどこれだけは聞いてくれ。パパのパパ・・・つまりお前のお爺サンはすごく厳しい人でな。パパは子供の頃、すごくつらい思いをして育ったから、パパに子供が出来たら、もっと自由にのびのびと育てようと思って・・・だからパパは・・・。」
のひ太「うるさい!!そんな言い訳聞きたくないよ!!パパも親のはしくれなら、子供が社会に出ても立派にやっていけるよう責任持って育てるべきぢゃないか!!それを、ママに逃げられたせいで昨日も今日もカップ麺カップ麺・・・。親ならもっと親らしくしたらどうなの!?」
パパ「・・・の・・・のひ太・・・。その通りかも知れない。パパは父親失格だよ・・・。」
のひ太「フン!!」
ボクは、沸かした湯をカップ麺に注ぎ、二階の自室へ戻った。
パパの顔を、一度も見る事さえなく・・・。
解ってる・・・。解ってるさ、パパのやさしさ、そしてボクに対する愛情は・・・。だけどそれぢゃ駄目なんだ!!夢も希望もないこのボクに唯一残された生きていくための糧は、誰かを憎む事くらいなんだ!!それなのに、あんな弱々しい姿を見せられたら・・・。
憎むに憎めないぢゃないか!!
畜生!!
(つづく)