・・・とは言え今回、1週間に数回自宅に戻る際に2回に分けて再読したのであるが、これは実に20年振りの事であった。
ちなみに、以下の画像は全一巻の愛蔵版(著者サイン入り)と、当時の連載終了から数年後に上演されたミュージカルの模様を収録したLPレコード(左:超レアな帯付~右:これまた珍しい銀色ジャケ)である。

(携帯で撮影したのでピンボケご容赦)
まっ、少女漫画とは言っても、本作のストーリーは、とある少年、そして彼が結成するロック・バンドの成功~挫折が軸となっており、’69年の連載開始当時・・・すなわち世界的なロック・ミュージックの台頭やヒッピー思想、ドラッグ及びサイケデリック・ムーブメント、ウッド・ストックやショウ・ビジネスの世界、人種差別やベトナム戦争等、当時の世相を交えつつ、反体制的な若者が真の自由を求めて大人や世間の持つ旧い常識に抵抗し葛藤するその生き様を、まさしくリアル・タイムに描写した作品なのだ。
また、音楽の世界で一度は成功を手にする主人公の、純粋すぎるあまりに苦しみ、そしてまた純粋であるがゆえにそばに居る人達を傷つけ、しまいには自らをも破滅へと追いやって行く姿が実にリアルに、しかし非常にテンポ良く描かれているせいか、一度読み始めるとその世界にのめり込まずには居られない強烈な魅力・・・否、魔力にも満ちているのであった。
そう言った意味では、ある種、取り扱うジャンルや舞台となる国こそ異なるものの、ロック版「あしたのジョー」とでも呼べる作品かも知れない。
世の中に流通する“安全な商品”となった時、ロックも、そしてパンクもその役目を終えるとするならば、「ファイヤー!」は、それ以前の、まだロックが市民権を勝ち取るはるか昔の時代の話である。
ともあれ、いつの時代にも、自分の生き方を自分で決めたいと考える若者と、そこに立ちふさがる“人間を家畜に貶める”社会体制との軋轢は存在する。
しかしながら本作には、“自由に生きるための最良のアドバイス”や“苦悩から解放してくれる絶対的な方法”と言った、常日頃あなたが求めてやまない“盲目的な依存心を満たしてくれる手っ取り早い結論”など微塵も書かれてはいない。
ここにはただ、主人公である少年の生き様・・・すなわち一人の人間の成長のプロセスが描かれているのみなのである。
後は、読んだ者がそれぞれに思いを巡らせれば、それで良し。
ともあれ、私が得た教訓は?と言えば・・・。
「結果はどうあれ、いつの時代も、自ら行動する者は美しい。」
・・・と言った所であろうか。
なお、今回読み返した際、あえて上記本文中には記載しなかった主人公の名前の、その命名の由来が私の脳裏で不意に閃いた・・・と言う事も付け加えておこう。