Mr.エレクトの独り言 K氏は死んじまっただ

Mr.エレクトの独り言

自主レーベル及び、日本人中古貴重盤ショップ、『エレクトレコード』オーナー、Mr.エレクトによる独舌日記!!

K氏は死んじまっただ

K藤K彦氏の自殺。私にとって、これは他人事ではない。

・・・と言うのも、K氏の仕事自体が、自らが何かを作り出す事ではなく、その目と感性で外国の最先端の音楽なり流行をキャッチし、それを自分なりの解釈で日本人受けする様にアレンジして発表すると言うスタイルだったからである。

これは、K氏に比べれば行動半径こそ狭いものの、自分が実際にあちこち出かけ、そうやって探し回り見つけ出した珍しいレコードを仕入れて売る事によって経営を成り立たせていた、当店(中古レコード屋)の販売スタイルと良く似ているのだ。

もっと言えば、一般の音楽ファンが海外のレコードを現在の様に簡単には入手出来なかった時代の輸入レコード屋に近い・・・と言えば、容易にご理解頂けるものと思う。

しかし、時代は変わった。

インター・ネットの普及によって、プロのみならず全国の素人がネット・オークションに日々様々なレコードを出品する訳であるからして、たとえどんな田舎に居ようが、更には家から一歩も出ずとも、ネット環境さえあれば誰でも珍しいレコードを見る事、知る事、買う事が出来る様になったのである。

そして、それはもちろん海外のレコードも同様だ。

そうなると、本来は自らが実際にあちこちを見て回り、長い年月かけなければ身に付ける事の出来なかった知識であるとか情報であるとかを、お茶の間に居ながらにして簡単に得る事が出来る訳なのである。

よって、自分の足と感性を使って何かを探し出すための時間と労力、及びそれを実現するための能力の必要性など、日増しに不要になって行く事は極自然の成り行きであろう。

常に流行の最先端を先取りしていたかの様なヒップな音楽活動を繰り広げていたK氏が、FKやSMBを何度も再結成している姿は、そんなK氏ですら、まさに時代の変化に取り残され過去の栄光にすがるしかないと言う事実を証明していたのである。

実際、当店も仕入れを殆どストップし、店も閉め、全盛期に仕入れた過去の在庫の山からあれこれ抜き出してネットに出品しているのが現状ゆえ、その気持ちが良く解るのだ。

しかもそれが、資金力があって立地条件の良い場所に店を出せれば能力が無くとも経営が成り立つと言うこの中古レコード販売業界において、ただただ自分の目と足と腕・・・すなわち自己の能力のみを頼りに四苦八苦してきた、雑草の如く打たれ強い私の様な人間であれば、まだ話は別である。

しかるに、元々が裕福な環境に育ち、自分の得意な分野における才能が上手く時代や世の中とフィットし、常にちやほやされて来たであろうK氏の事・・・。

ゆえに、10年~否、ここ20年来の氏の屈辱と苦悩の度合いに思いを馳せれば、今回の一件など不思議な事でもなんでもないのだ。

毎年、フランスに出かけ、お土産を買ってきてくれる叔父サンが居たとしよう。

昔ならば、その叔父サンがフランス帰りに家に遊びに来るとなれば、子供たちはワクワクした事であろう。

叔父サン曰く、「ほら~!!これは今、フランスで一番流行してるお菓子とオモチャだよ!!」

それに答えて子供、「それとっくに知ってる。それもう持ってる。インター・ネットで見たもん。」

もはや、フランス帰りの叔父サンなど用無しであり、言わば流行品問屋、あるいは音楽業界における輸入代理店は、その役目を終えたと言う事なのだ。

ましてや、趣味や嗜好も細分化している現在、そんな状況の中で、たくさんの人を同時に喜ばせるのは至難の業である。

20年前は時代の最先端を行ってた人が、今や時代遅れ、あるいは能無し扱いされ続けていたのだから、むしろここまで良くぞ耐え抜いたと褒めて差し上げるべきなのかも知れない。

人はパンのみに生きるにあらず。もちろん飯が食えなきゃ死ぬのだが、その仕事なり自分の能力に誇りとプライドを持てば持つ程、それが世の中に通用しなかった時の痛手は大きい。

K氏自身にとってみれば、とっくの昔に“死”を宣告されていたのである。

だがしかし私は言いたい。氏は実際に行動し、自分の足で、そして自分の目と感性で面白いものを見つけ出し、それをやはり頭と身体を用いて自分なりに再構築する事によって、人々を喜ばせようとしていたのであり、それが世間に受けるか受けないか、多くの人々に売れるか売れないかは別として、その行為自体の意義や価値は決して失われるものではないはずである・・・と。

ネットで見る事の出来る情報、知る事の出来る情報、それらもすべて結局は、どこかで誰かが行動したその結果が、そこに記されているに過ぎないのだし・・・。

ただ、時代が変わっただけの事。

ただ、それだけの事。

あの素晴らしい時は・・・もう来ない。