Mr.エレクトの独り言 「酷使の美学」③

Mr.エレクトの独り言

自主レーベル及び、日本人中古貴重盤ショップ、『エレクトレコード』オーナー、Mr.エレクトによる独舌日記!!

「酷使の美学」③

「酷使の美学」とは何であるかを考える際において、じゃあその最上級が何であるかと言えば、それは出産時の母親と、子育てにかかりっきりになっている母親の姿以外にはないと、私は思う。

出産時の母親の味わう痛みや苦しみに関しては述べるまでもないが、生後間もない乳幼児を育てる事は実に大変で、化粧だとか髪のセットだとかの自分の世話など後回しになる事はもちろん、食事や睡眠の時間も不規則になる等、自分の生活のすべてをそのために捧げ尽くさなくては不可能な大仕事なのである。

・・・とは言えもちろん、それは血の繋がった我が子のためにであり、突き詰めてみればそれはすべて自分の喜びのために行っている事なのだから当然の事だ・・・との言い方も出来るだろう。

しかるに、これを音楽に当てはめてみればどうなるか?

出産とはまさしく、作曲者が生みの苦しみを一身に引き受け、命をすり減らしながらも自らの分身とも呼べる楽曲を生み出さんとする“作曲”と言う行為に他ならず・・・。

子育てとは子供を強く正しく健やかに育て上げる事であるがゆえ、演奏者が生まれた楽曲に魂を吹き込み、その作品を本来あるべき理想の姿へと成長させるためには、自分の持てる演奏能力のすべてを楽曲に捧げ尽くす事以外に術はない・・・と、こうなるのである。


さて、それでは話を戻して・・・。

メンバー・チェンジを機にVIRGIN ROCKSと改名した再結成カムズであったが、音楽性の変化によって初期カムズのファンの殆どは再結成後に離れてしまい、当時はいわゆるインディーズ・ブームの真っ只中ゆえ人気こそあったが、私の様なチトセの個人的ファンの人達以外は同バンドの音楽的成長の過程を目の当たりにしてはおらず、VIRGIN ROCKSはレコードもシングルやコンピ参加曲しか発表していないため、その魅力が正確に伝わっている状態とはとても言い難い。

よって、同バンドの事をあれやこれやと語った所で、なかなか共感を得られないと言うのも、また一つの事実。(TT)

そんな訳で、今回のDVD発売と次回のベスト編集CD発売が、彼らの再評価に繋がれば、一ファンとしてはこれに勝る喜びはない訳なのであるが・・・。

ところで、再結成カムズ期の音楽性に関しては前回述べたが、私はあのミニ・アルバム(「POWER NEVER DIE」)のメジャー・ロック的な大味な音色も、同作品の賛否両論の一因ではなかったと考える。あれがもう少し固く尖った音色であれば、収録されているいくつかの楽曲が持つ切迫感がもっと増して、現在の様な評価に甘んじる事もなかったものと思われてならないのだ。

そこで、今回発売されたDVDであるが、この日はVIRGIN ROCKSも参加したコンピレーション盤「REBEL STREETⅣ~SOME GIRLS」発売記念GIGであり、共演はレコード会社の関係からか、メジャー・デビュー直前のZIGGY。しかも、私の知る限りでは、その後同企画のツアーで京都と名古屋でライヴが行われるものの、この日がVIRGIN ROCKSの東京でのラスト・ライヴであったはずである。

また、この日のライヴの顕著な特徴は、日頃のライヴに比べ楽曲のテンポがいずれも明らかに速く、初っ端と何故かラストにも2度程、「GET ALONG WITH YOU」と言う、簡単に言えば「クソ野郎!!どっか行け!!」ってな歌詞の楽曲が演奏されており、チトセが「大嫌い!!」と言うセリフでステージを去った事もあり、おそらくはメジャー・デビューを射程距離に置いているがゆえに起きるバンド内かもしくは事務所に対するゴタゴタでもあったものか?と、当時はぼんやり考えていたのだが、その理由は本DVDの解説書にベースのTETSU(O)氏が詳しく書いているので、そちらをご参照の事。

しかし如何なる理由にせよ、上記の通り、この日のライヴは異常に殺気立った鬼気迫る演奏ぶりが披露されているので、最初にVIRIGIN ROCKSを聴くなら、私はこのDVDを真っ先にお薦めする。

なお、某チェーン店の初回特典であるライヴCD-Rを聴いてもらえば、私が述べた演奏スピードの違いが明確にお解り頂けるものと思う。(同CD-Rには、1987年1月15日@新宿LOFTにおけるワンマン・ライヴから、「FREEDOM」のセリフ入り別アレンジ初演ヴァージョン、他全3曲が収録されている。)

ただ、超ミーハー的な観点から言えば、この日のチトセの衣装や髪型はちょっと・・・な感も否めない。それ以前はもっとパンクっぽいファッションだったのに・・・。だが、映像を観ているうちにそんなささい事はどうでも良くなってくるから不思議である。それに、そもそも4カメ使用のプロ・ショットが残されていただけでも奇跡なのだから、細かい事にあまり文句は言うまい。(実際、この映像を初めて観た時は、あまりに懐かしすぎて涙が出ちゃったし・・・。)

その他、同DVDは再結成カムズ時代から演っている曲を初めとして、VIRGIN ROCKSになってからの曲、そしておそらくこの日が初演の新曲も含めた、言わば集大成とも呼べる内容となっているので、入門編的作品としても最適であろうと思われる。

何にせよ、とにかく最初から最後まで喉を酷使してシャウトしっぱなしのチトセの姿を、そして「人間が目的に対して自己の能力を最大限に発揮する姿」すなわち「酷使の美学」と呼べるものを、是非見届けて欲しいのデス。

そして、いよいよ来月にはレコード音源を初めとしたベスト編集CDが発売されるので、これは私としても本当に楽しみにしている次第なのでありマス!!(^^)b

(つづく)

VIRGIN ROCKS LIVE DVD「SHUT UP !! Live at 新宿LOFT 1987」
VIRGIN ROCKS DVD