ナチコ先生は「今日は挨拶だけにしとくわネ」と、ボクを解放してくれた。
それにしても・・・。
今日は、何て長い一日だったんだろうか・・・。
女教師ナチコが赴任した、その記念すべき第一日目が、まさかボクの魂の命日になろうとは・・・。
何にせよ、これで完全に失われた・・・。
あの悪趣味かつ残酷極まりない選民ゲームによって、ボクの・・・何の取り柄もないこのボクの自尊心の最後のひとかけらは、あっけなく砕け散ったのさ。
これまでは何とか誤魔化す事も出来てた。
教室内を見渡して、あいつは頭が悪い、あいつは顔が変、あいつは性格が最悪・・・と、クラスメートの欠点をそれぞれ無理にでも探し出しあげつらって・・・。
そうやって、あいつらを見下す事で、ボクはかろうぢて自分の誇りを保ってたんだ。
その瞬間、そう・・・その一瞬、ボクはまるで自分が偉くなった様な気分に浸れるのさ。
アハハハハ・・・お笑い草だよ!!
そんなボク自身には、他人に誇れるものなんか何一つありゃしないって言うのにさ!!
ウフ・・・フ・フ・フ。
だけど、それももう、すべて終わりさ!!
だって、最下位だぜ!!
それも、自分を選んでくれる相手すら居ない!!
このボクが、あのトロヲ以下だってんだから!!
ウフフ・・・ウフフフフ・・・。
これが笑わずにおらりょうか!!
相応しい・・・。
これがボクに、最も相応しい結末なのさ!!
正体を現したのはナチコ先生の方ぢゃなく、惨めでブザマなボクの本当の姿さ!!
いつもは目立たない様に、静かに大人しく暮らしていたけど・・・。
ボクはまるで、太陽の下に引きずり出された醜いドブネズミさ!!
ホントは汚れた下水道がお似合いなのさ!!
うんにゃ!!違う!!
ボクは・・・ボクは・・・。
ドブネズミ以下・・・否!!
さしずめ・・・そう、地面を這いずるミミズ以下の存在なんだ!!
そして・・・それもこれも、みんなあいつらのせいだ!!
甲斐性なしのパパ!
子育てを放棄して家を出たママ!!
能無しロボットのドラへもんにドウラミちゃんその他・・・。
そして・・・そして・・・。
女教師ナチコ!!・・・オマエだ!!
ボクは・・・ボクは、今日の出来事を一生忘れないぞ!!
絶対に、絶対に仕返ししてやる!!
あの偽善者め!!
ボクを「真人間にする」だと~!!
冗談ぢゃない!!偉そうに!!
誰がナチコなんかに、誰がロボットの遺志を継ぐ教師なんかに服従するものか!!
そっちがそう出るなら、ボクにも考えがあるぞ!!
そうさ!!ボクは、もっともっと駄目人間になってやる!!
そして、極めつけの人間の屑になってやるんだ!!
これこそが、ボクに残された最後のプライドさ!!
ボクがボクであるために、ボクはナチコに反逆し続けてやる!!
あんな教師の言いなりになんかならない!!
キィ~~~!!
コノウラミ・・・ハラサデ・・・。
(つづく)