「フン!!ファミコンなんてばからしくてやってらんないよ!!」
ボクは、そう言うや、ファミコンを壁に投げつけた・・・。
・・・そうさ。君の予想通りさ。ゲームに飽きたんぢゃない。ボクは、自分の、あまりにもな反射神経の無さ、根気の無さ、意志の弱さに、我ながらあきれかえっていた。
ボクは何をすれば良いの?・・・。ボクは一体、何のために?ボクの生きてる価値って一体・・・。
しかし、そんな人間らしい感情、こころの葛藤も、アニメ「起動戦士ダンガム」の始まる時間になると、すっかり忘れてテレビに夢中になっている単純なボクなのであった。
ウフフ・・・。ボクって、純真でしょ?
ところが、そんな自堕落な日々が、そう長く続くはずもなく、ついに、破局の第一幕が切って落とされた・・・。
その日の深夜、久しぶりにシャワーを浴びようと、こっそりと1階に下りたボクは、居間の電気がまだついている事に気がついた。そして、ドア越しに、声がした・・・。
パパ「のひ太か・・・。そこでいいから、パパの話を聞きなさい。今日、ママがうちから出て行った。お前も、こんな生活をいつまでも続けてたらどうなるか、自分で良く考えなさい・・・。」
なんと弱々しい声だろう。こんなパパの声を聞くのは初めての事だ。それより、それより、ママが出て行ったって!?そ・・・そんな・・・!!
ボクの最大の不安は、今、まさに現実となった。ボクは猛烈な不安に襲われ、シャワーを浴びる事も忘れ、呆然としたまま、自分の部屋に戻った。
ええ~!!ママが出て行ったら、食事は誰が作ってくれるの!?
と言うか、この王国での暮らし、理想郷の如き楽園における、ボクの将来はどうなっちゃうの!?
・・・否。元より王国など無かったのだ。この部屋にあるもの、電灯も机も、テレビもパソコンも、毎日与えられる食事も、すやすや眠れるベッドも、何もかもすべて、そう、何もかもすべて、ボクが自力で手に入れたものなど、何一つとして無いぢゃないか。すべてはパパやママが買ったものであり、ボクを幸せにするために、頑張って働いて手に入れたものばかりなのだ。
・・・そう。王国どころか、ボクはまだ、自分自身の力で生きてさえいなかったんだ。
ボクはただ、単に、“生かされていた”に過ぎないのだ・・・。
(つづく)
★ついにママが家を出た!!のひ太は、終わり無き“ひきこもり”天国、そして家庭崩壊の地獄から抜け出せるのか!?
・・・だが、悪夢は、そう簡単には覚めないもの。
こころは急には腐らない。こころは、・・・こころは序々に腐るのだ・・・。