その映画は、いつ作られたともなく、誰も知らぬ間に、映画会社のフィルム倉庫に保管されていたと言う。
物好きな男性社員が、古いフィルムを検査する際、ほんの興味本位で、その映画を観たのが、すべての始まりであった。
それは、何と言う事の無い、古典的なホラー映画だったのだが、その男性社員は、その映画を観終わるや、急に具合が悪くなり、珍しく早退したのである。
翌日。男は、その映画に、何か不吉なものを感ぢつつも、どうしても、もう一度観たくなり、仕事の合間に、またもその映画を観てしまった。
ところが、その日は、身体の具合も悪くならず、むしろ、昨日は気づかなかった、その映画の魅力を発見し、男は来る日も来る日も、その映画を観続けた。
しかし、そんな所業が、何日も続けられるはずも無い。ほどなく、その奇行は、男性社員の上司の知る所となる・・・。
上司は言った。
「お前、なんでそんな映画ばっかり観てるんだ。」
男性社員は、こう答えた。
「それが、私とイタシマシテも、何とも不思議としか言いようが無いのデス。しかし、どうしても、もう一度、またもう一度と、観たくなってしまうのでありマス・・・。」
何を言っとるか・・・と言わんばかりに、呆れ顔を露にした上司だったが、それでも、どこか好奇心をくすぐられたのか、それぢゃあワシも・・・とばかりに、部下に指示を出し、その映画を鑑賞する事と相成った。
・・・すると、映画が進行するにつれ、上司の顔つきが、みるみる変わって行くではないか・・・。
「こっ、これは・・・!!」
(つづく)