ウフフフ・・・。クックックックック・・・。
もしも君が、この部屋のドアの前で、ボクの笑い声を聞いたなら、おそらく、ボクが狂ってしまったとでも考えるだろう。
そう。ボクは、笑い声を押し隠す事さえ忘れ、夜毎、インター・ネットに没頭していたのだ。
夢も希望も明日も未来も無い、ヒキコモリ地獄の果てに、ボクが見つけた、たったひとつの喜び。それは、ボクがボクであるための、そして、ボクが何者かになるための唯一の光明であり、存在意義獲得のための儀式。ボクはきっと、これをやり遂げ、“ボクがこの世に確かに生きていると言う証”を得るのだ。
・・・さてと、そろそろ、次の段階に入るか。今までは、こころに痛手を負った者同士、傷の舐め合い、慰め合いの芝居を続けて来たけど、今夜からは一人二役、自作自演による中傷攻撃で、あいつらにわずかに残った自尊心を、粉々に打ち砕いてやる。
そして、とことん思い知らせてやるのだ。力の弱い者や、駄目人間は、この世で生きる資格など、これっぽっちも無いって事を。
フフフ・・・。ああ、ボクは、この遊びが楽しくてたまらない。
顔も名前も知られる事の無い、ネット上だからこそ出来る、弱者が更に弱者を虐待すると言う、陰惨極まりない負の連鎖。実社会では、生き抜く事さえままならない、こんなボクでも、この世界では、強者、王者、支配者となり得るのだ。
フフフ・・・。フフフフフ・・・。
ボクは、深夜に起き出しては、それこそ夜が明けるまで、飽く事無く、パソコン上に映し出される世界と向き合い続けていた。
すべては、ボク自身の、こころの悦楽のため。また、真に“生きる”事が許される、ボク独りだけの千年王国を建立するためなのだ。
ウフフフフ・・・。
その日の明け方。キーを叩きつかれ、机に突っ伏したまま眠りに落ちたボクは、誰にともなく、こうつぶやいた・・・。
「ああ・・・。ボクの暗黒は、ここにある。」
(つづく)