その日の夕方。
家族三人、水入らずの夕食の時間。
あんな出来事があったからって、パパ、ママ、そしてボクとの間に、会話が無い訳ではなかった。「新しい学校はどうだ?」とか、テレビのニュースに対しての意見だとか、何かの不安を隠すかの様に、パパは饒舌だ。そして、ママはそれに相槌を打ち、ボクは差し障りの無い返答をする。
ウフフ・・・。これぞ、一家団欒。まさしく、憩いの一時とでも呼ぶのだろうか・・・。
もしも、窓の外から、ボクたち家族の食事風景を覗いたら、さぞ、幸せそうな家庭に見える事だろう。
ウフフ・・・。ウフフフフ・・・。
とは言え、あちらサンはどうだかは知らないが、既に、パパとボクの間には、こころの交流など皆無だった。
ただ、ママに対しては、申し訳無いと言う気持ちと、もう一度甘えたいと言う本音が、ボクのこころの中には未整理のまま、渦を巻いていた。
だけど・・・。そう、ママは、あの日以来、一度もボクの目を見て話をしないのだ。
ボクのママは、あのやさしいママは、既に死んでしまった・・・否、ボクが殺してしまったんだろうか・・・。
いや、違う!!ボクぢゃない!!ボクのせいぢゃない!!ボクは悪くない!!
みんなパパの、そして、パパの連れた来たドラへもんのせいだ!!
ボクは、ママの愛情を失ったショックを隠すために、パパを憎む事で、自分の不安定なこころを、何とか抑えつけていた。
ボクたちは、もはや、形だけの家族であり、互いにこころを閉ざしあったまま、ただただ、仮面の家族を演ぢているに過ぎなかった・・・。
(つづく)