Mr.エレクトの独り言 中学生棺桶c/wSETE STAR SEPT「偏見喰らい」スプリットCD
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Mr.エレクトの独り言

自主レーベル及び、日本人中古貴重盤ショップ、『エレクトレコード』オーナー、Mr.エレクトによる独舌日記!!

中学生棺桶c/wSETE STAR SEPT「偏見喰らい」スプリットCD

遅ればせながら・・・。

■中学生棺桶c/wSETE STAR SEPT「偏見喰らい」(スプリットCD)¥1050
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★中学生棺桶:色は紫、馬鹿がばれるの怖くて無口、六月三日の虚無牢、人生が二度無くとも パート1、人生が二度なくとも パート2、女の敵。(全6曲)

実に陰鬱なイントロから幕を開ける本作。そして、執拗に繰り返されるリフの応酬。その、メンバー間の結束力の固さを表したかの様な鉄の塊の如きサウンドは、時として、うっとりとさせられてしまう程に、心地良いものである事も事実。しかしながら、己が習性に対する愚痴ともとれる1曲目に続き、タイトル通り、実に批判的なメッセージを擁した2曲目などは、伝えるべき言葉を強調せんがため、サビの部分でブレイクが効果的に使われていたり、頻繁なテンポ・チェンジや転調によって意表を突いたりと、まるで、軽く聴き流されてしまう事を拒否するかの如く、人のこころに巣食う“怠惰の芽”をネチネチと突き刺す様な、直裁的かつ辛辣な攻撃性に満ちている。

3曲目。欝な季節、擦り寄る被害妄想にさいなまれつつも、自己嫌悪からもたらされる、こころの葛藤に抗おうとする姿が、いくぶんシュールに描かれている。本来は、外部の敵を攻撃する歌よりも、この手の自己と向き合う内省的な表現の方が、リーダーである葉蔵氏の実像に、より近いものなのではなかろうか。

4~5曲目。都井睦雄(津山30人殺しの犯人)に捧げられたとされる作品。ライヴにおいても明らかに異彩を放つ、これらの連作は、彼らのキャリアにおいて、ある種、一つの到達点でもあり、都井を題材に選んだと言う事は、葉蔵氏の表現行為における創作動機の原点を推察するに当たり、非常に興味深い点でもあろう。実際、その内容も、都井の心情を正しく理解し、共感している事が窺えるものとなっている。説明するまでもないが、結果的には無関係な人間をも巻き添えにしてしまったとは言うものの、あれは狂人による無差別殺人などではない。あの事件は、数を頼りに弱者を迫害する冷酷非情な村人達に対し、蔑まれ虐げられ続けた者が、死を覚悟の上で、自らの手で復讐を果たしたと言うだけの話なのだ。それも、極めて明確な意志と綿密な計画の下に。そもそも、“弱い事”自体が“悪”であると言うのであれば、何も言い返す余地はないが、いつだって少数派や弱者を虐待する者達の側は、決して断罪される事がないと言う、この理不尽極まりない現実の世の中、否、村社会に対し、“ただ殺されるだけ”の運命を受け入れると言う事は、“人間の尊厳”を手放す事にも等しい。都井にとっては、死を賭して仇敵を皆殺しにする事だけが、自分を“生かす”唯一の道であったのだ。そんな都井の、孤立無援の疎外感、そして怒りの復讐劇に、葉蔵氏が自分自身を見る思いであったであろう事は、想像に難くない。

また、楽曲的には、「パート1」における、地獄の業火の中でもだえ苦しみ、のた打ち回るかの如き、ひたすら反復を繰り返す袋小路的なリフ攻勢(構成)は、都井が屈辱に耐えながら計画を練り続けた潜伏期間を想い起させるに足るものだ。そして、突如、一転してストレートな曲調を伴って迫り来るクライマックス部分。それら、歌詞で言えば、「精神異常じゃない証 なまやさしくない性(さが) 怨み」・・・から、「祭に踊らされる馬鹿」までの、ラストのパートに至っては、大量殺戮を決起した瞬間の、都井の溜まりに溜まった怒りが最大限に爆発する様相が、聴く者の脳裏に、まるで手に取るかの様に強烈に焼き付けられ、まさしく圧巻の一言である。

ところで、「なまやさしくない性(さが) 怨み」の後半部分が、「逆恨み(さかうらみ)」と聴こえるのは偶然なのだろうか、それとも、葉蔵氏特有の言葉遊びのユーモアなのだろうか。いずれにせよ、個人的には、この部分が最もゾッとする箇所なのであった。

そして、幾分ダウナーな「パート2」は、都井の独白、あるいは遺言であると判断して差し支えないであろう。「腑に落ちない」まま、無念な想いのままでは死ねないからこそ、自ら残酷な運命に抗ったと言うのに、この後味の悪さは、一体何なのであろうか・・・。だが、これこそが、都井の境遇に自分を重ね合わせた葉蔵氏の、偽り無き本心を吐露した、ありのままの姿なのかも知れない。

ラスト、「女の敵」。先にリリースされた、ウイルス・レーベル・オムニバス収録曲の別テイク。GG ALLINの“勝手に改造”カヴァーとの事で、私は原曲を知らないが、棺桶にしては珍しく取り乱した演奏が、実にマッチしており、興奮を煽る。おそらくは、バンドの演奏力の向上が、この様なアグレッシヴな演奏をも可能にしたのであろう。

最後に。普通、ドゥーム・ロックと言えば、“重い”のが特長であるが、棺桶の場合は、“深い”とした方が合っている気がする。葉蔵氏本人も、自身の事を、“思慮深く”、そして“執念深い”・・・と称している事でもあるし。

★SETE STAR SEPT:曲名省略。(全7曲)

私自身、知識が薄いのだが、この手のサウンドを、グラインド・コアと呼ぶらしい。無理矢理に解説するならば、中学生棺桶の楽曲を10倍のスピードで演奏したかの印象を受けた。更に言うなれば、嫌悪感と悪意の発露を極限まで凝縮したかの如き怒涛の演奏で、あっと言う間に全曲終了してしまう。・・・簡単な説明でゴメンナサイ。ちなみに、彼らの熱望により、中学生棺桶との本スプリットCDリリースが実現した模様。


●上記スプリットCD、及び以下の作品は、当店、あるいは各バンドのライヴ会場にて発売中!!


■中学生棺桶の最新作「死なずの関係(蔑むなら俺が先&悟るならあたしの恥)」(DVD-R+CD-R)¥2500
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★昨年夏から暮れにかけてのライヴ映像DVD-Rと、ライヴ音源CD-Rとをカップリングした2枚組。トール・ケース仕様。