春が過ぎ、梅雨の季節を目前にした5月・・・。
ボクは相変わらず、シズコちゃんの事を想い続けていた。
朝も昼も・・・。
昼も夜も・・・。
寝ても覚めても・・・。
毎日毎晩、勉強も何も、他の事など、まったく頭に入らない有様さ。
そして、それは、パパへの憎悪や、ママに対する思慕の念さえをも忘れさせる程であり、言うなれば、死ぬ間際の人間が抱くであろう生への強烈なる妄執ぶりに近いものがあった。
その経験によって、ボクは、知らず知らず、無意識のうちに覚えたのかも知れないな・・・。
何かに没頭、没入する事によって、忌まわしき感情から逃れると言う術を・・・。
シズコちゃん・・・。
シズコちゃん・・・。
ああ・・・。
シズコちゃん・・・。
これが初恋・・・?
そう。それが、ボクの初恋だった。
フフフ・・・。
そうさ。実際の所、ボクにとっては、誰でも良かったのさ。
解ってる・・・。
ボクはただ、何かすがりつけるものを、依存出来るものを、感情移入出来る対象物を、求めていたに過ぎないんだ・・・。
だけど、今しばらくは浸らせてくれないか。
・・・恋と言う名の、この、いかにも人間らしい感情ってやつに・・・。
ウフフ・・・。ウフフフフ・・・。
アハハハハハハ・・・。
(つづく)