Mr.エレクトの独り言 実録「レコード・コレクター地獄変」
FC2ブログ

Mr.エレクトの独り言

自主レーベル及び、日本人中古貴重盤ショップ、『エレクトレコード』オーナー、Mr.エレクトによる独舌日記!!

実録「レコード・コレクター地獄変」⑤「亡者の述懐(前編)」

今にして思う・・・。

本連載のタイトルは、レコード・コレクターうんぬんではなく、レコード・ジャンキー、あるいは「レコード亡者地獄変」にすべきであったと・・・。

ジョニー氏。そう、彼の脳は既に、レコード収集欲・・・否、物欲を満たす事によってのみでしか自己の存在を確認出来ない程に、焼き焦げ燃やし尽くされているのだ。

そもそも、彼の収集対象はシングル盤オンリー。今でこそ落ちぶれてはいるが、全盛期はシングル盤2万枚のコレクションに対し、LPレコードは14枚しか持ってないと言う、異常な偏りを見せていた。

更に、彼が主にコレクションしていたのは女性歌手のシングル盤であり、それも5万~10万クラスの超レア盤から’80年代アイドル、女性ニュー・ミュージック・シンガー、果てはマイナー歌手・・・それもどっかの田舎のホステスやら金持ちのマダム(=くそババア)が自主制作で出した様なレコード・・・と、それこそ「ゆりかごから墓場まで」とでも言わんばかりの無節操にして際限の無い、まさしく無明の地獄道を行くかの如し有様だったのである。

しかも、せいぜいアニメ番組の主題歌シングルのみならまだしも、表紙(←彼はレコード・ジャケットの事をそう呼ぶ)の絵柄が好きだからと言う理由だけで、民謡のレコードからレクリエーション用(フォーク・ダンスの伴奏等)のレコード、しまいには効果音のレコードにまで手を出す始末・・・。

まあ、そんな無謀な集め方をしているくらいだから、ジョニー氏の日常は、寝ても覚めても常にレコードの事で頭の中がいっぱいなのであった。

彼と初めて出会った日の事。・・・それを私は今でもハッキリと記憶している。だがしかし、その話はおいおい語るとしよう。何故なら、ジョニー氏は現在も生きて生活しており、今もなおホット過ぎるネタを私に提供し続けてくれているのだから・・・。

そんなジョニー氏の、今回はノートの話。

現役時代・・・とあえて言うが、先に述べた様なレコードの集め方をしていつつそれでもなお彼のノートは、ミミズの這った様な文字のWANTリスト(=入手希望レコードのリスト)が、鉛筆でびっしり書き込まれていたのであるが、驚くなかれ、その数何と400点以上・・・。

なお、そのリストの内訳は、過去にレコード屋で見たけど買わず後悔してるもの、オークション・リストに掲載されていたものや落札出来なかったもの、雑誌や書籍で紹介されていたレコード等・・・と、情報源は各種様々なのであるが、ただそれだけで400点もの未所有レコードのリストを作れようはずがない。

しかるに、その種明かしをしてしまえば、何と彼はわざわざ国会図書館にまで出向き、情報の少ない’70年代前半以前に発売された女性歌手のレコードをしらみつぶしに調べ上げ、そこでWANTリストを作成していたのであった・・・。

それはまさにレコード気○い・・・あるいは、レコードと心中する覚悟でなければ出来ぬ、まさしく地獄への片道切符を手に入れんとする自己破壊的行為であったとしか言えまい。

そして現在もなおジョニー氏は、自らの欲望が生み出した呪縛がもたらす悪夢から未だに目を醒ましてはいない様子なのであった・・・。

(中編につづく)

実録「レコード・コレクター地獄変」④「銭(ぜに)ズラよ・・・」の巻

★みんなのアイドル、セミ・ホームレス中年の“ジョニー氏”が、また来店イタシマシタ!!

ジョニー氏、私が24時間不規則に仕事してる事を知っており、昼間寝てる時に公衆電話から十円玉一枚分で電話かけてきたり、夜中だろうが突然来店する訳なのでありマスが・・・。

その日、私はたまたま自宅に帰っており、仕事するため夜に店に向かうと、ジョニー氏が階段に座って私が戻るのを待っておりマシタ。

ジョニー「今日は見てもらいたいものがあるんデスよ。」

私「え~!!また何か売りに来たんデスか。どうせロクなもの無いんでしょ?」

ジョニー「これなんデスよ。」

見ると、お菓子か紅茶のティーバックが入っていた様な長方形の缶ケースに、古銭がいっぱい詰まってるではないか。
090212_2241~0001
(携帯で撮影のため画像が暗くて申し訳無い・・・。)

ざっと千枚くらいあるだろうか?しかし、殆どが一銭ばかりで、他に十銭や五十銭等もあるが、何枚かチェックした所、昭和中期のものが多く、古銭の知識の無い私から見ても、それほど珍しいものは無さそうだ。

こりゃ、調べるのめんどくせ~な~・・・。そう思いつつ、私はこう言った。

私「ジョニーさん、査定して買い取ってあげても良いけど、ちょっと言ってもらいたいセリフがあんデスよね~。」

ジョニー「えっ!?何デスか?」

私「銭(ぜに)ズラよ!!・・・って言ってみて下サイよ!!」

ジョニー「銭ズラよ!!・・・デスか?」

私「そうそう!!もっぺんちゃんと言わなきゃ査定しマセンよ!!」

ジョニー「(若干恥ずかしそうに・・・)銭ズラよ!!」

私「うわ~!!それそれ!!それが聞きたかったんスわ~!!」

そして更に・・・。

私「あのね、ジョニーさん。こんなのまとめて持ってきても、一山いくらで買取されて終わりデスよ。真面目にお金を稼ごうと思うんだったら、少しは古銭の価値を調べてくるか、せめて種類毎に分類して持って来なくちゃ。」

そう言って私は、ジョニー氏にコインの分類作業をさせたのであった。
090212_2301~0001

その間、私は店内でパソコンを立ち上げ、そろそろ終ったかな?と頃合を見計らって店の外に出たが、全然仕事がはかどってない。そこでやむを得ず、私も手伝うハメに・・・。

私「ホントにジョニーさんは要領が悪いと言うか、怠け者と言うか・・・。そんな楽して金儲けしようとしたって、この不景気なご時世、そうそう上手く行くと思ったら大間違いデスよ!!」

・・・と、説教しつつも、手分けして何とか大まかな分類が終了。

私「ホラ!!こうすれば、どれが珍しくてどれがありふれてるかって事が一目瞭然で解るでしょ?ほんぢゃあこの珍しい数枚だけ、ちょっとネットで価値を調べてあげるからちょっと待って下サイね。」
090217_0650.jpg

そしてジョニー氏を外に待たせ、店内に5~6枚の古銭を持ち込みネットで検索・・・の前に、最近仕事の合間に凝ってる「平安京エイリアン」をワン・ゲーム・・・と。
090217_0652~0001
いやなに・・・仕事前に士気を高めるためにはどうしても必要な儀式なもんで・・・。

その後、ネット・オークション等で古銭を検索するも、やはり大して高価なものはなさそうだ。それに実際、こんなのいちいち出品して売るのもメンドクサイし・・・。でもまあ、せっかく持ってきてくれたんだから、まとめて五百円くらいで買い取ってあげるか・・・。

私「ジョニーさん。あんま珍しいものなかったからアレだけど、メシが喰えるくらいのお金欲しいでしょ?」

ジョニー「そう・・・デスね~。」

私「ぢゃあ百円・・・って、“ひゃくえん”ぢゃあ“ひゃ・・・くえん(喰えん)”からマズイっすよね。」

ジョニー「そうデスね・・・。」

私「ぢゃあ二百円・・・って、“にひゃくえん”でも“にひゃ・・・くえん(喰えん)”から・・三百円・・・あれ?これも“さんびゃ・・・くえん”から・・・。」

などと、誰も見てないにも関わらず下らないコント(?)をしばし繰り返した後・・・。

私「ぢゃあ457円。これなら“くえん”って事ないから大丈夫っしょ。」

ジョニー「そうデスね~。これなら喰えマス。」

私「そしたら今度は、も少しマシなもの持ってきて下サイね!!」

・・・とまあ、ジョニー氏と私とのやり取りは、いつもこんな調子なのでありマシタ。(^^:)

(つづく)

実録「レコード・コレクター地獄変」③「ジョニー伝説~序章」

A氏、何だか一部で人気があるので、もっと親しみやすくするためにジョニー氏(仮名)と呼ぶ事にイタシマシタ。ちなみに命名の根拠は、彼の顔がジョニー大倉とおすぎとピーコのおすぎを足して二で割った様な風貌だからでありマス。

さて、何故にジョニー氏が余裕ぶっこいてセミ・ホームレス生活なんぞやってられるかと言えば、その秘密はおいおい明かしていくつもりなのであるが、ある時、彼はこう言い放った。

ジョニー「東京で飢え死にする人は居マセンよ。」

「言うよね~!!」・・・と私。

そこで今回は特別に、私が徹底取材した彼の生活(主に食)スケジュールを、皆様にもお教えしようと思う。

日曜日。午前:教会。夕方:新宿中央公園。

月曜日。夕方:新宿中央公園。

火曜日。午前:代々木公園。

水曜日。朝:教会。夕方:教会。

木曜日。昼:代々木公園。

金曜日。夕方:池袋某所。

土曜日。夕方:渋谷某所。

上記、教会以外はすべて炊き出し系の食事配布行事。なお教会には、行けば食事にありつける所と、一時間程ありがたいお話を聞いたりそれをみんなで復唱した後にやっと飯にありつける所とがあるらしい。

また、小銭がある時は深夜のネット喫茶でシャワーを浴びるジョニー氏だが、とある教会では一日数十人限定でシャワーを貸し出してもいるそうで、二日連続の使用は不可だが、そこもたまに利用しているそうだ。

いやしかし、これなら確かに飢え死にするって事はないよな~。

でもジョニー氏、こうも付け加えた。

ジョニー「これぢゃ足りないよね。」

・・・と。

そこでジョニー氏、“拾い”をやって小銭稼ぎをする事により、その不足分を補う訳だが、それですべて良しと言う訳ではなく、一番問題となってくるのは、やはり寝泊りする住居であろう。

特に、寒い冬は・・・。

ジョニー氏、夜は一体どこで寝てるのか?

そんな素朴な疑問を初めとしたジョニー伝説の数々、そしてまた、物欲を満たす事のみを求めて生きた亡者の如きレコード・コレクターとしての日々と、その後の波乱万丈な転落地獄の人生絵巻の一部始終・・・。

いつかまた、その全貌を語る日も来るであろう・・・。

(第一部・完)

★書かねばならない音楽ネタが溜まっているため、当連載は一旦休止させて頂きマス。m(_)m

「ホームレス中学生」に便乗して「セミ・ホームレス中年」って本でも書こうかな。・・・って、そんなの売れね~か。

実録「レコード・コレクター地獄変」②「炊き出し(後編)」

私はジョニー氏に、こう問うた。

私「へ~!!炊き込みご飯って、どんな具が入ってるんデスか?」

すると、ジョニー氏曰く・・・。

ジョニー「人参とか色々・・・。」

それを聞き、具材はそんなに豪華ではないだろうと判断した私(←極度の肉嫌い)。

私「へ~!!ボクも食べさせてもらって良いんデスかね~!?」

ジョニー「良いんぢゃないデスか。」

だが、炊き出しが行われている場所は客席となっている階段を下りた公園の更に奥の方ゆえ、そこまで歩いて移動するのも何だかメンドクサイな~!!・・・と思い直し、私は人生初の炊き出し体験レポートのチャンスをみすみす断念する事に・・・。

そしてふと、ジョニー氏が小さな紙コップを手にしてる事に気づいた。

私「あれ~!!ジョニーさん、何飲んでんスか!?」

ジョニー「あっ、これ酒デスよ。」

私「え~!!自分だけズルイ!!ボクにももらって来て下さいよ~!!」

・・・と、立ってるものは親でも使えとばかり、すぐそこで配ってる酒を持ってこさせる私。

ところが・・・。この寒いのに、それは冷たい日本酒だった。

ひえ~!!てっきり暖かい甘酒とかかと思った~!!

・・・てな具合に、年末年始のハードな仕事で疲れた私は、ちょっと動くのもだるい状態で、観劇を続けていた訳でありマスが・・・。

私「ところでジョニーさん、次の炊き出しの予定は明日とか明後日なんデスか?」

ジョニー氏は、徒歩での移動オンリーにも関わらず、新宿のみならず渋谷や池袋で週に1~2回程度行われる炊き出しにも顔を出しているのだ。

ジョニー「今日は、ここ(新宿)で昼と夕方の2回、あるんデスよ。」

私「へ~!!ぢゃあ、今日は演劇終わってからもこの辺でしばらくうろうろして時間潰して、2食目にありつけるんデスね~!!」

ジョニー「いや、夕方は渋谷の炊き出しに行きマス。」

私「え~!?1人が1日2回配給してもらうのは駄目なんデスか~?」

何と、私のその問いに対してのジョニー氏の回答は、驚くべきものであった・・・。

ジョニー「あっち(渋谷)で出るメニューの方が好きなんデスよ。」

私「ええっ~!!そのためにわざわざ渋谷まで歩いて~!?ゆうに一時間はかかるでしょうに~!!ここにいれば体力も消費せず次の飯にありつけるのに、わざわざ移動するなんて考えられな~い・・・。」

ちなみに、本日の渋谷での炊き出しのメニューはモツ煮込みご飯だとの事・・・。

いやはやしかし、これは何とも、落ちぶれてもグルメ・・・と言うか、欲望の赴くままにレコードを買い捲くり身を持ち崩してしまったジョニー氏に相応しい、あきれたエピソードではなかろうか・・・。

何せ、こんなセミ・ホームレスの状態になってまで己が欲望を最優先するのだから、彼はまさしく浪費癖による破滅型人間の典型と言えよう・・・。

しかしジョニー氏に、他のホームレスの人達や急に派遣を切られて失業した人達のような切迫した様子が無い事には、隠されたある明確な理由があったのだ。

(つづく)

実録「レコード・コレクター地獄変」①「炊き出し(前編)」

ジョニー(仮名)と言う男が居る。

彼は元レコード・コレクターで、他に何一つ趣味を持たず、30年近く、ただただレコードだけを買い続けていた。

また、父は既に死去していたのだが、ある時期は母が病気で入院したのを良い事に、母の貯金はおろか年金や保険金にまで手を出して飛行機で九州までレコードを探しに行く程のクレイジーな買いっぷりでもあった。

ゆえに、1万や2万はもちろん、絶頂期には5万円や10万円のプレミア・レコードも迷わず買い捲っていたのである。

だが、その後、母が死に、家賃を滞納しすぎたため大家に怒鳴られるのが怖いからと言う理由でアパートにも戻らず、一年くらい前からセミ・ホームレス生活をしていたのであったが・・・。

ところで、毎年の年末年始に、水族館劇場と言う劇団による“さすらい姉妹”と言う女性ユニットをメインにした投げ銭による(カンパのみを収入源とした)野外公演が行われており、年明けの1月3日には近所の新宿中央公園でも開催されると言う情報を聞きつけたゆえ、私はふらっと出かけてみる事にした。

そして、客席代わりとなっている、かなり段差のある二つの公園を繋ぐ横幅の広い石段の最上段に腰をかけ、公演の様子を見るともなく眺めていた・・・。

すると、目の前に見覚えのある男性・・・そう!!そこに居たのは、件の元レコード・コレクターであり、現セミ・ホームレスのジョニー氏であった。

「あれ~!!ジョニーさん、どうしてこんな所に!?演劇なんか一切興味ないはずなのに。」

・・・しかし、謎はすぐに解けた。

そもそも、さすらい姉妹の公演自体が、都内各所で週に1~2回行われる“炊き出し(主にホーム・レスの人達のために無料で食事を配膳する行事)に合わせて開催されているため、観客の殆どは水族館劇場のファンと言うよりは、炊き出し目当てで集まった人達なのである。

現にジョニー氏は、既に昼の炊き出しで配膳された食事にありついており、どんなメニューが出るの?と、私が興味本位で聞くと、ジョニー氏曰く「今日は炊き込みご飯だったんデスよ」・・・との事であった。

(つづく)
前のページ